崖っぷちの韓国航空業界

韓国の航空業界は、日韓関係の悪化により、ドル箱だった日本路線を2019年に大幅縮小し、これを補う形で中国などアジア路線を拡大しました。
しかし、そこにコロナショックが降りかかりました。
韓国航空各社が保有する航空機は90%が稼働しておらず、空の道は途絶えたままです。
韓国政府が大規模な金融支援策を発表したものの、業界浮揚の道筋はいまだ全く見えません。

最大手の大韓航空は、一枚岩で臨むべきコロナ禍においても「お家騒動」を引きずるなど、そもそもの経営体制が安定していません。
大韓航空を中核とする財閥「韓進グループ」では先代会長の死去を受け、「ナッツ姫」として知られる姉と弟との間で経営権を巡り確執が表面化しました。
結局、弟に軍配が上がることになりましたが、決着がついたのが3月下旬、まさに世界で感染が拡大する最中でした。

韓国の航空業界は、国土の狭さや国民の海外旅行志向の強さなどから国際線を主力としているのが特徴です。
中でも大韓航空は旅客売り上げに占める国際線の割合が特に高く、実に94%です。
感染拡大前、大韓航空は国際線を週900便ほど運航していましたが、現在はアメリカの一部やパリ、ロンドンなど週50便程度にまで激減し、売り上げの大部分が吹っ飛んだことになります。

韓国航空業界の主な資金調達の手段に「航空運賃債権」というものがあります。
将来のチケット売上げを担保にするもので、すぐに運転資金に回せる資産流動化債権です。
韓国メディアによると、大韓航空が3月に発行した航空運賃債権は約550億円。
一方で航空機リース料などの固定費と社債償還費、つまり4月に出ていく額は計約650億円です。
この差額の100億円については、手元の運転資金から捻出するしかありませんが、3月の運賃収入も激減しているため「大韓航空は4月中に資金が底をつく」という見方が出てきています。
遊休資産の売却や役員報酬の返納など策を講じているものの、「もはや最大手でさえ不渡りを出しかねない」と報じられるほどです。
業界2番手のアシアナ航空はさらなる苦境に立たされています。
そもそもアシアナ航空はコロナショック前から経営難に陥っていました。
LCC(格安航空会社)との競争激化などで資金繰りが悪化し、2019年の純損失は約700億円に上るなど、経営状況は極めて厳しい状況にありました。
2019年末に大手財閥「現代」傘下の建設会社「HDC現代産業開発」を中心とする企業連合に売却されることが決まりましたが、いまだに契約締結には至っていないため「企業連合が買収から手を引くのではないか」という指摘も出てきています。

大手2社以上にひっ迫しているのがLCC(格安航空会社)です。
韓国では規制緩和によって国際線を運航するLCCが6社あり、厳しい価格競争を強いられています。
元々、経営基盤の脆弱な韓国LCCは、日本路線と中国路線の開拓で短期間に急成長を遂げた面もあり、国際線が閉ざされると一気に経営が危うくなります。
またウォン安の進行で燃料費や航空機リース料の負担も増え、収益を悪化させています。
大手よりも規模が小さいLCCにとって、日韓関係の悪化にウォン安、さらにコロナショックというトリプルパンチは、会社存続の危機に直結します。

0 Comments

Post a comment