アベノミクスの副作用 その1

アベノミクス──。その効果に疑問の声はあるが、日経平均株価は30%上がり円安は15%進んだ。
昨年11月に9000円前後だった日経平均株価はその後、右肩上がりで上昇し、1万3000円をうかがう勢いにある。
為替相場も1ドル=90円台後半の円安水準が定着し、トヨタ自動車やキヤノンなど輸出企業は、業績予想の上方修正や増益を見込んでいる。
春闘では、年間一時金の要求に満額回答する企業が相次ぎ、セブン&アイ・ホールディングスのように、給与を引き上げる企業も現れた。
しかし、アベノミクスの行く手にはいくつも地雷が埋まっている

 一つ目は人々の「期待」。
「デフレに効く」という特効薬がはやされ、安倍晋三首相は見事に期待の変化を作り上げた。
「物価が上がるのではないか」「今度こそ景気がよくなるのではないか」、円安のタイミングにも支えられ、アベノミクスが人々の期待を前向きに変えたことは事実である。
しかし、安倍政権のわずか数カ月間で、日本経済の実態が大きく変わったわけではない。
変わったのは、株価と為替レート、それに人々のマインドだ。
これらはいずれも期待で動くもので、たちまちに景色が変わって、逆に暗転することもある。
問題は、アベノミクスがうまく点火した人々の期待を、どこまで持続させられるか。
また、日本銀行の金融緩和によってインフレ期待を高める方法にも疑問が残る。
短期金利が0%に張り付くゼロ金利制約下では、金融緩和は効かないというのが、金融政策の専門家の間ではコンセンサスである。

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