アベノミクスの副作用 その3

三つ目のポイントは金利の動向。
金利の上昇、とくに10年満期の国債を物差しとする長期金利が上がると、住宅ローンの金利が上がるだけではなく、「借金漬け」になっている国の財政が破綻する。
日本経済が抱える最大の難題は、国内総生産(GDP)比で200%超、金額にして1000兆円近くに膨れ上がった巨額の国債残高。
物価が上がりだした時、金利も一緒に上がる可能性が高まる。
消費者物価が2%上がると、これまでの経験では長期金利は2%超になる。
そうなると国債の利払いが6兆円から20兆円に膨れ上がる。
金利が上昇するほど景気がよくなり、その分だけ税収も増えれば問題はない。
金利の上昇分以上に税収も増えないと、増税か歳出削減を行わなければ、財政赤字は減るどころか、国債の利払い負担だけが重くなる。

 この1カ月ほど、長期金利は下がり、9年8カ月ぶりの低水準である。
日銀が国債を大量に買い取ってくれる期待があるから、銀行も安心して国債を購入できる。
だが、皮肉にも国債買い取り政策がうまくいくと、「景気がよくなれば、長期金利はそれ以上に上がる。いままでは運がよかった」という事態になりかねない。
アベノミクスがうまくいってデフレから脱却できたとしても、物価や賃金だけでなく、普通は金利も上昇する。
近いうちに2%のインフレになると多くの人が信じるなら、0.6%台の10年国債は誰も買おうとしないので、国債の金利は急騰する。
現実に、国債が売れなくなっている。
財務省によると、今年度(12年7月~13年6月)の個人向け国債の販売額は、前年度実績を3割下回る見通しで、2兆5千億円の販売目標にも届かないとしている。
理由は明白で、金利が安く、投資対象としての魅力に欠けるからである。
巨額マネーを運用する機関投資家にとっても状況は同じで、積極的に日本国債を購入するメリットは、ほとんどない。
結局、国債の買い手は日銀ぐらいとなり、国債。
債券市場の多くの参加者は、株式市場や外為市場と異なって、当面は2%のインフレ目標の実現は不可能だとみなしている。

 金利の上昇は、銀行が大量に保有する国債の値下がりを誘発する。
日本国債を多く抱えているのが銀行や生命保険会社で、国債の評価損を通じて金融システムの不安定化を招くおそれがある。
今は指標となる10年物の国債金利は0.6%台という超低金利だが、長期金利が2%を超えると価格は大幅に下落する。
多大な影響を受けるのは、貸し出しを抑えて安全とされている国債を買っている地方の金融機関で、今でも厳しい経営を揺さぶることになる。
国債価格の下落は、国債を大量に保有する国内の銀行や保険会社の財務内容を大幅に悪化する。
銀行は自己防衛から貸し渋り、貸しはがしを行うようになるため、景気はますます悪くなる可能性がある。

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