ユーロの危機 その2.ドイツ世論

キプロスは、ユーロ圏内でエストニアに次いで2番目に小さく、GDPは2兆円もない。
経済規模は、神奈川県のひとつの区よりも小さな国である。なぜこんな小国がユーロにそこまで影響力を持っているのだろうか。
このことが、ユーロという共通通貨の構造的な欠陥を表わしている。

 キプロスの銀行はそれほどの規模ではないが、キプロスという国の経済規模よりも大きい。
キプロスは自国だけでは救済できないサイズの銀行を抱えている。
キプロスの銀行は破綻の危機にあり、欧州連合が金融支援する必要がある。
欧州連合が支援するとは、またドイツの納税者が金を出すということである。
欧州連合は、キプロスの銀行に預金課税の案を強く要求している、その首謀者はドイツのメルケル首相である。
ドイツはギリシャ支援の際、国内からの強い反発があったが、ユーロの一枚岩を崩さないという姿勢を貫き、譲歩をし続けギリシャを支援してきた。
しかし、その間、メルケル首相のドイツキリスト教民主連盟は、地方選で敗戦が続き、9月の下院総選挙には黄色信号がともっている。
選挙対策上、キプロスの自助努力を前面に出さないと不都合なのである。
欧州連合にとっては預金封鎖、没収によって捻出される金額58億ユーロなど、雀の涙ほどの極めて小さな額だが、これは金の問題ではない。
欧州連合としても、キプロスの破綻によるシステミック・リスクが、ユーロ圏全体に波及するのは避けたいが、万が一の場合でも、ギリシャやスペインよりはるかに影響は小さい。
だから、ドイツもこのように強気で交渉できる。
今回の預金封鎖・没収の狙いは、支援される側の国の国民にも痛みを味合わせることにより、常に資金を援助する側に回るドイツやフィンランドなどの国民感情を慰撫することにある。
そして、ユーロを維持するために必要な金融支援をすることを政治的に可能にしようとすることである。
今後、ユーロ圏が合意したこうしたキプロス支援の枠組みが、他国への支援のひな型になるだろう。

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